2014年07月20日

2001年宇宙の旅

2001年宇宙の旅2001年宇宙の旅
アーサー・C・クラーク
伊藤典夫 訳
1993年発行の新盤序文付
2010年の第18刷を入手
早川書房 定価800円

映画は何度の見ているので、読みたいと一度も思っていなかったが、たまたまマンガ倉庫浦添店で発見。200円で購入。映画とは全く別の面白さがあった

300万年前のヒトザルとモノリスから、惑星への旅、HALの反乱、そしてスターゲートからスターチャイルドへ、という一連の流れはほぼ同じ。目指す惑星が映画は木星だが、小説は土星という程度

違うのは、スターゲート以降の宇宙や未知の世界に対する表現やが違う
こうなったのは、序文で著者が証言しているように、原作の進行を映画の撮影が追い越してしまったこともあるだろう
しかし、それ以上にこの小説を映像化するのは不可能と判断したからではないか。小説は半分がいわばト書きのような解説になっている。300年前のヒトザル、未知の世界で独りきりになったボーマンに多くのセリフを与えるわけにはいくまい。かといって、ナレーションが入れば、前半と後半はそのナレーションを聞くばかりになってしまう・・・これにはしかし科学番組のナレーションを聞く驚きや好奇心はないだろう。いくら科学的な考察を加えているとはいえ、小説では結果著者の見解を聞いているだけで常に反問が頭をもたげてくるはずだ。小説ならそれも楽しいが、映像が流れてゆく映画ではそうはいかない

著者はキューブリックとはお互いに領分を侵したと言っているが、結果として両方の作品とも素晴らしくなった
しかし初版が1968年。もう半世紀近くも前になる。この間、科学がこれだけ進み、さまざまな発見があったのに、小説には笑っちゃうような点がないのには驚かされる。ただ一つ、宇宙への進出は思ったより進まなかったという点だけ
宇宙事業は技術だけでなく意志が必要だが、果たして宇宙を目指す力を21世紀の人間は持ち続けられるのか

著者は2010年、2061年、3001年の宇宙の旅と3つも続編を出しているが、キューブリックはそれらを映像化していない。2001年の出来に満足しているんだろう。ただ「コンタクト」についての感想を聞いてみたい


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Posted by 比嘉俊次 at 20:01│Comments(0)小説
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