2017年09月27日

オリエント世界は テレビじゃ言えない 都市伝説陰謀

オリエント世界は テレビじゃ言えない 都市伝説陰謀 この1カ月は豊漁。6冊中3冊が大当たり

『激ヤバ都市伝説 世界の陰謀』
ここ数年停滞気味の「ムー」にとって代わった感のある宝島社のシリーズ。冒頭の関暁夫がやっぱり冴えている。「信じるも信じないもあなた次第」というキメ言葉が体現する押し引き具合が絶妙。今や都市伝説のストーリーテラーとして新定番ともいえる地位を確立したといっていい。U16対象だった都市伝説をTVに耐えるエンターテイメントに復権させた。
しかしハイロ―ミックスの編集がすごい。これまでのUFO・UMA、フリーメイソンという定番を超えて現実世界の事件や経済とリンクさせている。しかし、それでもちょっと既知のエピソードを読むと興ざめのU16の世界だが山口敏太郎によるコラムは秀逸。UMAや陰謀つまり「噂」とは何か社会学的な分析をきちんと配している。曰く「UFOに関する軍事機密報道に圧力をかけるより、オカルトでしょと無視」「都市伝説は本当っぽいウソ話をしますの同義語」「我が身の不遇をすべて陰謀のせいにすればダークサイドに堕ちる」「陰謀の闇を語るとき、陰謀もあなたを闇へと引きずりこむ(つまり深淵)」。これは言葉を持った種が構成する、神話から社内の噂まで古今大小を問わず貫徹する社会の本質をついている。なぜ高学歴者が洗脳されやすいかも説明しちゃってるかも
「現在、都市伝説と陰謀は混じり合い平然と大手メディアで取り上げられるようになった」と言うが、そうなると「矢追純一とは何者か」というのは次の「テーマ」となりうるか
関はハローバイバイ面白かったからまたコントもやってほしい。爆笑問題に対抗できるはず。「ムー」がんばれ

『テレビじゃ言えない』ビートたけし
やっぱり何かを作る人は見えている世界が違うんだなと改めて感じる。確か最初に勝ったビートたけしの本はワニブックスの「眠れぬ夜のあなたに」というショートネタ集で、あの頃に比べてギラギラ感は薄らいでいるけど、イライラ感、食って掛かる感は逆に強まっている
表面的な論や形式にとらわれず人間の本質を直視する感覚は、やはり世界的な名作の著者に近いと思う。「冷血」「猫である」、あるいはずっとコールフィールドのまま
映画はちょっと見ると疲れ果ててしまうから、本で。コラム以外の本も書いてほしい


『オリエント世界はなぜ崩壊したか』 宮田律 新潮選書
「渾身の全史」とあるが、これは違う。オリエントの偉大な文明に触れるのは全300Pのうち、3分の1ほど
「異形化するイスラムと忘れられた共存の叡智」というサブタイトルにあるようにミレット制に代表されるイスラムが本来持っている「寛容」が失われISのような対極にある集団の台頭を嘆き、その始まりは西洋によるオリエントの歴史と文化を無視した分断にあると訴えるもの
しかしミレット制の具体的な運用に関する記述は少なくサラディンに関する記述に至っては数行。「寛容」の実態が見えない
ただ収穫もある。オリエントの側から見る「世界史」はまったく違ったものに見える。おそらく東アジアを除くアジア史から見た西欧も同じ感じだろうか。だが、オリエントは一つじゃないし、オリエントが優勢の頃は欧州を制圧・圧迫していたのは事実だ。「寛容」とは支配者のものであり、その思う範囲でしかない。今も同じではないかと逆に思った

同じカテゴリー(社会)の記事
集中講義 旧約聖書
集中講義 旧約聖書(2017-07-09 18:04)

日本史の誕生
日本史の誕生(2017-06-26 10:16)

Posted by 比嘉俊次 at 22:41│Comments(0)社会
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。