2018年09月02日

欲望の砂糖史 辺海放浪など

欲望の砂糖史 辺海放浪など海放浪    日高恒太郎
欲望の砂糖史  原井一郎

 県産本フェアで購入。日高氏は「不時着」の著者で種子島生まれ。伊是名・伊平屋のみならず壱岐や対馬などを旅し見聞きしたことをまとめたもの。「街道を行く」をほうふつとさせるが、やはり「島」の人間らしく情報の及ばない辺境の地で見せる人のふるまいを見逃さない。
 不時着の実相のみならず王直らは種子島に「遭難」したのか。重野安繹(やすつぐ)と島妻。逃亡軍人たちの虚栄心などなど

 「欲望の砂糖史」は世界商品である砂糖(と樟脳も一部)をめぐって、コーヒー同様どれだけの富と貧困が生まれたかをつづったもの。利権に群がる商人や政治家は定番の名前が出てくるが、沖縄史には登場することが少ない笹森儀助、中村十作らも登場するなど奄美を中心に沖縄も含め様々な動きが記されている。
 しかし新納中三は時勢に乗った薩摩藩士という程度しか知らなかったが、奄美農民の窮状を救おうと立ち上がり、結果一年で奄美支庁長を罷免されていたとは。砂糖という商品の大きさと、どこにでもある権勢の争い。新興国家の動乱は新納、上杉だけが挫折を味わったわけではあるまい。
 いい本だが正直読みにくい。新聞連載をまとめたものらしいが章立てが整理されておらず同じ話が何度も出てきたり前後したり。また強すぎるプロレタリア的視点が立体的な把握を邪魔している感も


英国諜報員アシェンデン
6ペンスと絆以外ほとんど置かれることのなかったモームだが、新潮社が装丁を新しくしてラインナップを充実させ露出が増えていた。(残念ながら先月の”その他”本と一緒に売ってしまった)
自身がスパイだったモームの人間記。皮肉と斜めに構えた感じだがJアーチャーより読み易く、猫であるに近い感じかな
傑作選「ジゴロとジゴレット」なんてものある。時間があるときに


珈琲の世界史
「欲望の砂糖史」の冒頭に「砂糖とコーヒーがヨーロッパ人の幸福にとって不可欠かどうかは知らない。しかしこの2つの生産物が世界の二つの広大な地域に不幸をもたらしたのは確実である(サン・ピエール 喜望峰航海記)」という言葉を紹介ているが、この本はそんな歴史・経済史家の視点ではなく、愛好家・消費者視点での話

沈黙
 王直、砂糖、コーヒーときたところに、、たまたま映画のDVDを見て。約20年ぶり?史実から史料風の手紙、3人称、そして史料と章ごとに変わる視点は最初戸惑うが、作品にリアリティを与える。感銘するような一文はないが、とんでもない切迫感がある。
 しかしパードレたちの懊悩が真に魂の震えだとしても、コーヒーと砂糖の歴史を知ると、彼らがいろんな意味で先鋒であったことを考えると「ともに苦しんでいた」という部分より筑後守とのやり取りやフェレイラの言う変質が気になる。オランダなどのプロテスタントの言葉を借りてそんな所のやり取りももっと聞きたかった。


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Posted by 比嘉俊次 at 23:26│Comments(0)社会小説
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