2016年04月02日
ものの言い方西東
小林隆 澤村美幸
言葉ではなく、ものの言い方に注目したもの
本というより、研究論文の途中段階をわかりやすく抜き出したという感じだが、十分に興味深い。学術領域ではありそうでなかった新しい視点
東北などの東日本では要件を端的に伝える表現-例えば店に入っての「買う」や隣家の戸口を開けての「起きたか」など―が目立つ一方で、西日本、とりわけ大阪などの都市部では挨拶の定型文―「おはようございます」からはじまり「いい天気ですね」-など口数は多いが不用意に踏み込まないコミュニケーション体系があるのではないかというのも
もちろんこれは西東という地理的・民族的な面よりも都市としての歴史が深く関係しているというもの
おそらく、研究の大筋に異論を唱える人はいないだろう。思えば沖縄という狭い地域に限っても人の出入りが常の都市部と地方ではコミュニケーションの構成が違う
筆者らには更に研究を深めていくとのことだが、個人的にはこの方向で研究を重ねるだけでなく、「定型文」に集約されてゆく日本の言語についてもぜひ研究してほしい
おそらく東北であっても、今どきは純農村部でもなければ「定型化」された「挨拶」が会話の冒頭だろう
TVや出版された「あいさつ文例集」から「学習」しているはずだ。沖縄でおいてすら「本日はお日柄もよく」「お足元が悪い中」はすっかり慣習化された、擦り切れ感すらある表現といっていい
一方で「自分の言葉で話す」挨拶への評価も日本社会では高い
「作文がめんどうだから」、あるいは社会的な同調圧力だけでは説明できない動機があるはずだ
この傾向は他の文化でもこれほど強くあるものなのか?
また「流行語」がこれだけ生まれ消費されるのも日本だけなのか?
社会学的なら「息子は○○社にお世話になっている」というあの言い回し
など、筆者らの研究視点から広がる地平は広い
もっとも根本的な部分では日本語は「話し言葉」より「書き言葉=文字」の方が優位にあることにも関係しているかもしれないし
Posted by 比嘉俊次 at 10:29│Comments(0)
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