2012年10月28日

日本史の授業2

日本史の授業2 井沢元彦の学校では教えてくれない
日本史の授業2
井沢元彦 PHP研究所

「逆説の日本史」シリーズの井沢氏の新著。たまたま書店で発見。やっぱりネットだけでは本は買えない。ネットの「リコメンド(この本を買った方は、こんな本も・・・)」は既読ばっかり出てくるし、発見がない

日本(というより大和)が見えてくる内容
世界史と比べると日本史は「?」が多い。例えば「城」という認識の特殊性や、人間の移動についての記述も「弥生人の流入」程度で済まされて、地域が持つ多様性が塗りつぶされてしまっている(その点、秘密のケンミンショーはいい番組だ。100年後には民俗資料としてかなりの価値を持つだろう)。

日本の歴史を形作った根底に「ケガレ」にたいする認識がまずあるというと、突拍子もない気がするが、最高権力者である「天皇」が軍を持っていないのは人類史上得意なことだし、武家政権誕生後も朝廷が存続したこと、仏教が民衆に受容される際の変質(成仏の捕らえ方の違い)など、確かに一本のスジで納得できる

琉球史はどうなのか・・・鉄器を手にしたものが支配し権力を確立、しかしその後クーデーターで7代・60年あまりで第二尚氏に変わってしまったが、その後は長かった尚泰までの19代まで400年あまりと、途中から薩摩傀儡とはいえ長かったが、天皇が持つ「権威」はあったのかどうか・・・

タイトルは「学校では教えてくれない」だけど、高校生がこの本を読んで理解できるか、いや理解できるようにならなければ、これからの時代、海外の人間とやっていけないのかも・・・
「権威」というものは「大人」でなければ分かりにくい。だから、例えば中国の鄧小平氏がなぜ主席でも軍の最高指令でもないのに「最高実力者」とされてきたのか、中国の「儀礼」があそこまで発達したのかも分からなかった

先月読んだ「日本近代史」と同じ、「権威の源泉」や「力の変遷」が通底するテーマとなってくる。これ自体は日本(大和)でも変わらない。ここは人類共通の歴史のようだ
「天皇が絶対権力者であるがゆえに日本に民主主義が根付いた」という言葉も、漱石の猫が「元来人間というものは自己の力量に慢じてみんな増長している。少し人間より強いもの(宇宙人?)が出て来ていじめてやらなくてはこの先どこまで増長するか分らない」と鋭い分析していることに通じる
その一方で、天皇の権威をも超えるものとして「話し合い」の重要性に触れ「天皇が大相撲にお見えになると、ああ、この方がわれわれの事件を潰したんだなあ、と思います(笑)。パチパチと手をたたいておられるけども」という2.26事件の青年将校の文芸春秋掲載の回顧録に触れ、「権威」を利用する者たち、そして天皇をも越える「力」として「話し合い」について触れている

ただ、本書が疑問に答えていないのは「周囲に異民族がいなかったために、日本では城塞都市が発達しなかった」というが、縄文人から見れば弥生人は「異民族」だったはず。その対立が歴史に深い対立を残していないのはなぜなのか?
①いくらかの武力を伴いながらも、弥生人は主に先進の文化(農耕・土器)の力でもって浸透した
②武力で制圧しながらも上下関係にするのではなく、争いを避けるため同化を積極的に進めた
③武力で制圧しながらも基本的に平地を開墾し定着したため海・山で狩猟を続けた縄文の民との接触も緩やかで。同化はその後の「国替え」などによって進められた
④武力をほとんど伴わず、農産物と狩猟物との交換という平和的な交流が基本で同化が進んだ
などが考えられるか

同じ島国のイギリスもケルト・ローマ・サクソン・ノルマンと多くの統治者がいながらも国を保っている。あれはやっぱりグレートブリテンの記憶と「英語」に代表される世界に通じる権威が力の源泉か。遠い過去になり、英語は米語にとって変わられたから最近、独立論が盛んになってきたのかも


しかし、この本、12年2月9日に1刷が出て、買った本は3刷で3月9日。やっぱり歴史の本は宣伝しなくても根強いファンがいるんだな

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Posted by 比嘉俊次 at 12:03│Comments(1)社会
この記事へのコメント
沖縄の宗教を「先祖崇拝」という人がいるが、「崇拝」の意味とか宗教とは意味合いが違うと思う

先祖供養が足りないと良くないことがおこるという、「御願不足(うがんぶそく)」という言葉も非常に不思議というか矛盾を感じる(気に入らないとは言え、なぜ子孫を苦しめる必要があるのか・・・)ところがあったが、根は怨霊・言霊(⇒オギヤカ)への恐れなのか?

今では「美ら」という字が当てられる「ちゅら」も、本来は「清ら」という意味。美しさよりも清らかさ

DNA解析でも縄文人と弥生人の混血が明らかで、沖縄はさらにいろいろな血が入っているが、言語などの共通性が多い(与那国から見える台湾はなぜいつも外国だったのか・・・)。これはいつからなのか、なぜなのか
Posted by 比嘉俊次比嘉俊次 at 2012年11月04日 00:01
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