2012年06月10日

自滅するアメリカ帝国

自滅するアメリカ帝国自滅するアメリカ帝国
日本よ、独立せよ
伊藤貫

内容は非常に簡潔な本。まず大きなテーマは帯と副題にある通り。それを著者が信用する学識経験者の言葉などを引用し「彼もそう言っている」という形で立証してゆくというもの・・・これで新書で820円か、という気はする

帯に「同盟国・日本」とわざわざカッコ書きしてあるように、アメリカの対日観の本音をまずは探ってゆく・・・しかし、これは驚くべきことなのか?沖縄にいる人間から見ると「そりゃそうだよ」と言いたくなるが、帯の白抜きにあるように「日本人の固定観念を打破する」とあるだけに、そうなんだろうな
前に読んだ若泉敬の本があんな内容になってくるわけだな

この「なぜ核武装をゆるさないのか」という事を、また多くの識者の言葉によって固めていくわけだが、その内容はなんと背表紙にほぼすべてある!
自滅するアメリカ帝国非常に簡潔に、しかも分かりやすく書いてくれている。そして、読む(と言ってもほとんど引用)までもなく「そうだろうな」と思う
特に最後の「重要なのはグランドストラテジー(基本戦略とでも訳すのかな?)だ」とあるのには激しく同意

問題は、アメリカが核武装を許さない、と言っておいて「日本は核武装すべき」というギャップからして埋まっていない。これは政治の現実を考えると、途方もない溝の深さだ

それ以上に「とは言っても核兵器か・・・」という思いは誰でもあるだろう

ニュークリアーシェアリングとかが出てこないのはなぜ?

それと、この理論で行くと、究極的にはすべての国が核武装をすると、戦争はなくなるということ?それはないよな・・・その降伏点はどこなのか、その場合非常に悲惨なことになってしまうし
こういう過去に歴史がない、あるいは「何とか理論」がない部分は無視・ノータッチってのも・・・

それにしても、この手の本の定義がいまいちよく分からないのが「保守」と「左翼」という言葉。いい加減やめるべきではないか。対岸のアメリカから見て、今、その言葉を定義しなおす必要があるのはよくわかっているはず
本書では「親米保守」という言葉を使い、米国従属を「保守」と分けて使っているようだが、伝統的価値観に共通点のないアメリカに近くて保守ってちょっと意味的に混乱しないか?それに「左翼」は文脈から見ると、共産・社会主義者を指しているのではなく、自己の説に合わない側にレッテルを張っているだけ、言葉の定義からして論説の質感を落としもったいない

それと、ジョセフ・ナイをタレント学者としてこき下ろしているが、確かに彼の振る舞いは「軽い」ものだと思うけど、アメリカのソフトパワーはやっぱり侮れない。沖縄の人間もなぜこれだけ親米なのか、反米の国ですらハリウッド映画は強いし、様々な文化的発信の、その善悪観への影響力は全く無視できないと思う。あと、やはり言論の自由というか、地位あるエスタブリッシュメントも、保身に走らず、正面から国策にブレーキするような意見する、真っ向から討議するというのがまばゆい光を放っているしね。アメリカが「自壊する」は新書のタイトルとはいえ言い過ぎでしょ
自国の政府に「ほえずらかかせてやる」と言い放つ石原都知事でさえ、横田基地の返還とはいわず共同使用、しかもお願い口調。ワシはタカより強い

本書では中世以降のヨーロッパ外交の「バランス・オブ・パワー」をしきりに持ち出しているが、むしろ弓削達の「ローマはなぜ滅んだか」の深さに改めて気が付き読み返すことに(半分も「読めて」いないと思いブックオフ送りにしていなかった。本棚、というより本棚億部屋が欲しい・・・)。本書では孫子を引用しているが、帝国研究は結局、ローマか中国に行きつくのか

さて、日本には独立するだけの能力(技術・経済・体制)は充分にあるけど、10年後どうなっているか
いろいろ大所高所で言っても、やはり直近の試金石は普天間基地とTPP交渉となる。普天間基地も全国の自治体がNOで沖縄に話が戻ってきた(そもそも反米感情に火がつきかねないと沖縄に集約したのだから当然と言えば当然だろうが、アメリカはどう見たか・・・)。TPPは財界は推進、農業や医療団体などは反対の姿勢

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Posted by 比嘉俊次 at 23:38│Comments(0)社会
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