2011年09月14日

世界の国名地名うんちく大全

世界の国名地名うんちく大全世界の国名地名うんちく大全
八幡和郎 著
平凡社新書562 880円

新書ながらタイトルに偽りなし。全世界の国名地名についての「うんちく」が詰め込まれた1冊

国連未承認の国を含めて、おそらく全て網羅してあると思われ、それを300ページ以内に詰め込んでいるので図も足りず、筆も急いでいて読みにくい
が、ものすごく濃厚な1冊

むしろ地名の由来はさわり程度でそこから見える各国の歴史が新鮮

例えばトルコ。イスラム教は民族より宗教意識が優先でオスマントルコも「トルコ人意識」は薄かったというが、ヨーロッパでの民族意識の高揚を受けて、トルコ人意識が芽生え、トルコ語の強制などに結びつき、結果帝国としての力が衰退していったという考察
そもそも「トルコ系」などというのは現在の国(この概念も欧州的な意味では意外と新しい)や民族(←現在でも定義はあいまいだが)という大きさでは認識できないということに気づかされる

また「中南米」とひとくくりで認識している地域もメスティーソ、アフリカンが多数派を警醒するだけでなく、ほとんど欧州系で占められるエル・サルバドル
労働力としてつれてこられたインド系が多数を占めつつある南洋のフィジーなど、地域による事情の違いなど

アメリカ人はアメリカしか見えていない、欧州人はなぜこんなに違う日本と中国の区別がつかないのか、と普段思っていても、自分も結局は世界を知らないと思い知らされる

興味深いのは
ウィキペディアを見ると、経産省出身(東大出身で仲井真知事と同じルートだが大津市長選に落選している)の著者は沖縄総合事務局で企画調整課長(85年)だったようだ

これだけ視野の広い方だけに面白い企画もあったかと思うが、80年代半ばから90年代というと・・・思いつくのは不評の「自由貿易地域(沖縄の責任も大だが)」ぐらいか

偶然にも、参考文献として筆頭に挙げられている『世界地名ルーツ辞典』を売ったお金で買った本だが、こっちの方がずっと面白い
ただ残念なのは「大全」にしてしまった編集方針。テーマを絞り、日本との比較考察(著書多数)を含めた1冊を期待したい

それと「人民」と「共和」が日本人による訳語であるため「中華人民共和国は日本語である」というのは、これだけの教養がある著者なのにどうしたことだろう。例えば「山河」は中国由来の言葉だが、発音が違うし今では完全な日本語の一部。それを認めないなら「日本」も中国語と言われかねない。そもそも訳語なんだし(薩摩芋を琉球芋と呼ばせるのと同じ)

世界史は今では必修になっているそうだが、いいことだと思う(ただ欧米史に偏り、一つの極を作っているイスラム圏に関する知識が決定的に少ないが)。日本と東アジアの歴史だけでは今の世の中を理解するのは難しい

同時に「毛沢東」を「もうたくとう」という日本でしか通じない呼び方(欧米人も「マオ」と呼んでいた)も改めないと会話が成立しない事に中国に行って気づいた
(その一方で欧米人を前にすると自らの姓と名をひっくり返す妙な習慣はまだ根強い)
中国人が日本人の名前をちゃんと日本語読みしてくれるし(東京をTongjinとも言わない)

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Posted by 比嘉俊次 at 14:56│Comments(0)社会
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