三国志

比嘉俊次

2014年09月27日 21:13

三国志 演義から正史、そして史実へ

渡邊義浩 中公新書2099 760円+8%

「演義」と「正史(=官制史観)」との比較のみならず、その背景を分かりやすく紹介している

「豪傑」「英雄」などだけでは見えてこない三国志の世界が見えてくる

それはリーダーの人材登用法であり、有力者層との妥協であり、価値観の確立と敷衍という現代となんら変わらない「政治」があったという事が分かる

曹操と黄巾との妥協による青洲兵30万の編入

周瑜、魯粛、陸遜と賢臣に恵まれながらまとめを欠いた孫政権

一方でやはり人に恵まれる人付き合いと大義があった劉備

益州と荊州の名士とのバランスに苦しみ馬謖を切らざるをえなかった諸葛亮

そして「四世三公(袁氏)」「二世三公(周瑜)」など名士たちと義とプライド

古代エジプトといい、人間の知識や価値観は時代によって変っていっても、その集団である「人間社会」となるとあまり変わらない。我欲と大義、嫉妬とプライド、疑心と妥協・・・

演義は読み物なので、主役と敵役、脇役を鮮明にするのは仕方ないが、舞台回しにしか過ぎないような董卓や魯粛、袁紹にしろ、歴史に名を残す人はやはりひとかどの人物

それが「当たる」かどうかは、やはり星の巡り会わせか・・・三国志の滅びの美学は史実を知ることで一層深まる


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