金閣寺
金閣寺
三島由紀夫
新潮文庫 113刷
590円
三島の名を確立した普及の名作・・・
確かに素晴らしい作品。特に「文芸」とも言うべき技巧はまさに「鑑賞」に値する
強弱、緩急、動静、明暗、乾湿・・・一つの小説で見せびらかすような多彩な筆致。しかし全体に精密さと剛性感が通底し独特のしっとりとした重みを醸し出している
大学生のころ読んだときは、つまらないと思ったが、この文章の完成度の高さを今は理解できる
しかし・・・古い。実際に60年近く前に発表されただけに古いのは当然だが、そういう意味ではなく古さを感じる
何が古いのか?
「認識」と「行動」とか言ってるのが古いのか
スピード感あふれるクライマックスの後、「生きようと思う」とか言って終わる構成が古いのか
脚注を見返しながら読まなければいけないスタイルが古いのか
いずれにしても夏目漱石の作品は「時代」を感じても「古さ」は感じない
いや、古いというより、今の時代と合っていない、あるいは戦中~戦後という時代設定が古典としてみることを阻んでいるだけかもしれない
どのページを開いて読んでも、読み込んでしまう文章でありながら、もう一度読み返そうとは思わない。そんな感じ
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