食料を読む
『食料を読む』日経文庫
鈴木宣弘・木下順子
日経文庫はいい本が少なからずあるが、扱い書店が少ない。アマゾンで購入。860円プラス送料250円。情報格差・・・
TPPの特に食料分野につて一級の「論客」といえる東京大学大学院の鈴木教授とコーネル大客員研究員の木下さんの共著
食料問題のマクロ経済学的な視点と、食料政策(単に農家保護だけでなく、輸出まで含めた食料戦略)の奥深さを知る
特に前半のマクロ経済学的な分析はわかりやすい。言葉の明快さでごまかしているんじゃなくて、言っていることが解ができる
しかしTPP参加の是非が問われる今、大切なのはそこではない
アメリカの手厚い農家保護
・輸出価格に、返済免除or融資不足払いで支援、そして固定払いで上乗せ、それでも足りなければとどめの不足払いでゲタを履かせ手取り確保
・輸出補助金は全廃したが、国内向け出荷には輸出分の補助金も載せられた額に相当する補助金が支払われているが、これはOK
・自由貿易を掲げながら、より競争力があるオーストラリア農業に対するガード
の理論立てと、そこにある戦略。すごいな・・・やっぱり心配なのは単価や品質うんぬんではなく、アメリカのこの理論をタテにした交渉力か?
巷で繰り返される「強い農業」の空虚さ・・・鋭い指摘。サクランボなどの嗜好品と、コモデティといえる穀物を同列に並べて論じる乱暴さ(というか経済学的なおかしさ)はもちろんない
スイスも「消費者の育成」とうまくやっているが、お隣の韓国もCO2フドーマイレージを公共交通機関のチケットと交換するといううまい策を考えている。国内の農作物の保護になるし、公共交通機関の経営支援にもなる
クリチバの公共政策でも見られることだが、目的を考えれば「なるほど」と頭のいい人なら考えつきそうなことではあるが、日本ではついに・・・この未曾有の震災でも唸るような政策は出てきていない
「縦割り行政」では単に非効率というだけでなく、外交交渉での理論立てで太刀打ちできないことが示されている
さてTPPどうなることか・・・明後日にも野田総理は参加の是非を態度表明するとみられている
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