決断できない日本
『決断できない日本』
The Japan That Can't Decide
ケビン・メア 文春新書
やっぱりメアさんを嫌いにはなれない
http://higatoshitsugu.ti-da.net/d2011-05.html
主張は強いが、かなり注意深い章立てや構成(相手の弱点を徹底的に付き、自分の論が立つところのみで勝負。自分に不利な点があれば、事前に断り深追いを防ぐ・・・アメリカの法廷劇そのもの)
そしてポイントでは琴線に訴える単語の選択・・・なるほど司馬遼太郎を読み、黒澤映画を観ていたのか・・・これはメアさんの趣味なのか、それとも日本人の心情を理解しようと解読していたものなのか・・・などと思うと、この本はメアさんの主張とは別に、後年歴史資料として貴重だと思う。舞台裏というかアメリカ外交当局の様子も綴られている
それだけに、誤った・・・というか意図的と思われる沖縄を誤認させる記述は改めてほしいが・・・「シニアオフィサー」として思い通りにいかなかったことをよっぽど腹に据えかねているよう
(伊波・前宜野湾市長が「事実と異なる」と名誉棄損で刑事告訴したが、ちゃんと冒頭で「個人的な経験に基づく」と予防線もあるがどうなるか・・・)
だが、今冷静に振り返れば、メアさんの先代のトーマスさんまで、歴代の総領事が多数派を占める沖縄の保守層と慎重に積み上げてきたものを結局はメアさんが崩し、混沌とした政治状況を作り出してしまったのは、単に結果論とは言えまい
もう一つの収穫は、日本の官僚もこんなタフなアメリカ人と丁々発止やっていた人がいるということか
アメリカの外交官からするとイヤだろうが、日本の役人が言われるままに法を曲げていては心もとない
しかし、日本語詳しいな・・・「横紙破り」「棒をのんだような」・・・ときて「先制的自衛権」という言葉も披露している
そして「普通の国」という言葉については巧妙に解釈を避けている・・・さすが
これだけの力があるなら日本の国籍を取得して日本のために働いて欲しいと思わなくもないが・・・ありえない話だろうな。どんなことがあろうとも、やはりメアさんが尽くす国はアメリカ以外にないという意思が本書から滲んでいる
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