人間都市クリチバ
『人間都市クリチバ』服部桂三
学芸出版社
ブラジル南部の都市、クリチバの都市計画についての本
クリチバはバスシステムが優秀とネットで見かけたので、そのあたりを期待して買ったものの・・・バスシステムのテクニカル的(バス停の間隔や回数券、乗り継ぎ時のターミナルの配置、運行頻度、経営、)な記述は薄い
図説も少なく、分かりやすさや面白さとは縁遠い大学のテキストのよう
ただ、タイトルにあるとおり著者は実践的な都市計画のあり方を著すというのが目的でその目的は達せられている
クリチバは経済的に特に豊かでもなく、洪水やスラム街などの課題を抱える街であるが、アイディアと実践によって世界から注目される都市となるよう計画され、かなりの成果を収めている
単に利便性や採算を考慮するだけでなく、低所得者への配慮や次世代への教育など、人間中心に街づくりを行っているので「人間都市」というタイトルをつけている
例えば最も有名なバスシステム。人口200万人を超える都市で地下鉄でも不釣合いではないが、お金がないからバスで。普通のバスでは鉄道と比べて輸送力とスピードで劣るので連結バスと専用レーン、前払い制のプラットホームを導入。路線周辺は建築基準を緩和し都市機能を集積する一方で、周辺には緑地を配置(開発権の交換などで財政出動を抑える)。さらに車を持てない低所得者とその職場を考えて新規路線を設定・・・と、交通政策が財政・都市開発・環境保全・福祉と一体となり、誰もが住みやすい街を目指している
さらに児童図書館を各地に整備、公園には羊を放って管理費の削減と・・・正直、驚くような仕組みは特にない。が、著者が何度も協調している通り、クリチバはそれを強固に実践し、一方で時代の変化に合わせて柔軟に運用している。そして人口60万から40年ほどで4倍以上に街を「つくった」。これはすごい
日本はお金も技術もあった(あえて過去形)のに、きれいな街は保全地区ぐらい
なぜだろう?道路(主要道路は国と県)と都市開発・福祉(自治体)の主体が別だから?そもそも政治(つまり有権者)に「街づくり」という意識がないのも致命的だろう
沖縄もインフラは整っている。あとは政治に意思さえあれば渋滞解消なんて簡単なのに・・・
履歴
アマゾンの古本で「程度良」で高い方を買ったのに、赤ペンは入っているし(しかも「なぜここに?」という所に)、〇〇さんへという著者へのサイン入り・・・買うのはかまわないけど、これ売っていいのか?
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