悪魔の用語辞典
副島隆彦編著
『悪魔の用語辞典』
副島隆彦「編著」となっている事に注意
ビアスの「悪魔の辞典」にあるような風刺も毒もない。読者を「啓蒙」してやろうという鼻息の荒さだけが伝わってくる
なぜビアスのようなキレがないのか・・・おそらく風刺には人や社会を切るだけではなく、時に自分自身をこき下ろす「自虐」というスパイスが必要だからだと思うが、この本にはそれがない、からだと思う。ひたすら自分たちは人間社会を上から見下ろすという構図。悪魔は人を上からも見るだろうが、背後からのぞき見たり、時には内面にも入り込んでこないと
それに「悪魔の・・・」であるはずが、オックスフォード辞典という人間の一言語による辞書を聖典のように仰ぎ見ているんだから・・・本書からは「ケケケ」という冷笑は聞こえてこないし、欺瞞に対する怒りよりも「どうせ」的な無力感が伝わってくる章がほとんど
こうした基本的な構図の問題だけではなく、文書も冗長で「辞典」に必要な端的さに欠けるし(もちろんこれは辞書じゃないが体裁上)、なにより視点にあまり新しさというか目からうろこ感がない
閉店間際に、著者の名前と表紙だけでカゴに放り込んでしまった。1680円・・・
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