世界がわかる理系の名著
『世界がわかる理系の名著』
文春新書685 鎌田浩毅著
ダーウィンやファーブル、ガリレイ、『沈黙の春』の著者・カーソンなど古今の西洋科学の第一人者14人を一人当たり12,3ページを割き、生涯・代表的著書の概略・その後の世界への影響などが簡潔にまとめられている
「科学」の定義も幅広くローマ時代の博物学(プリニウス)から、生理学のパブロフ、メジャーとはいえないユクスキュル(「生物から見た世界」)そしてアインシュタインまで幅広く網羅されていて、科学とは何か?研究者の人生と社会、真実が持つ力など様々な示唆を与えてくれる
文も簡潔・端的で、かなり濃縮された内容ながら意味が分からない所やムダに飾った所もない
が「コラム」として各科学者毎に、関連または影響を受けた本を紹介しているが、この選択には多分というか濃密に著者の趣味が入り込んでいて、違和感を覚える。それは編集者も承知で「コラム」という枠にしたと思う。また著者の思い入れが強い部分かと思うが、この2ページは省いて、もう少しでも他の部分にページを割いて欲しかった
とはいえ、著者は科学にたいして思いが深いのが伝わり、近年の文科系・理科系を問わず「孫引き知識」の看板付け替えで大手を振っている者たちに対して納得いかないのであろう、「これは飽くまでガイドで、知りたければちゃんと自分で勉強して下さい」という主張が端々から感じられる
と、言われても、仕事をしているとこうゆう「まとめ本(著者はガイドとしていると思うが、実際多くの大人はこう読んでいるはず)」を読んで薄れていく記憶や感動を呼び起こすだけの時間しかないし・・・
なぜ「世界がわかる」なのかは分からないし、「理系の名著」というタイトルでは手に取る人が減ってしまうのではないかと心配してしまう。岩波ジュニア新書なら多くの中学生が手に取ってくれただろうに
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