在日米軍・海兵隊の意義及び役割

比嘉俊次

2011年05月15日 00:15

 先週、北沢防衛大臣が来県なさった際に仲井真に手渡した冊子『在日米軍・海兵隊の意義及び役割』防衛省発行
 内容はタイトルにあるような感じで沖縄の者にとって目新しい内容はないが、後々史料価値があるかも知れぬ記述があるのでメモ

 まず「在日米軍・海兵隊」とわざわざ海兵隊を別記していることからも明らかな通り、普天間ASの辺野古への移転を進めるため、反対している県民を啓蒙しようという意図で編集されている。賞味20ページの薄い冊子であるが「沖縄に海兵隊がいることの重要性」に8ページが割かれている

 アメリカが沖縄に駐留する意味は明快で、中東まで及ぶアジア全域をカバーできるからで「キーストーン オブ パシフィック」と端的に言い表している(表紙にある沖縄を中心とした同心円はアメリカ軍が戦略的価値を示すために復帰前から使っていたもので、沖縄県も物流の優位性などをアピールするために良くパンフレットなどで使っている)。
 それを日本政府関係者も安易に北朝鮮情勢などを考えた場合に「沖縄の戦略的位置」と素人なら納得しそうな言い換えで転用したために「北朝鮮に近いところなら他にもある」「上陸部隊なのに北方四島を実効支配しているロシア(震災後も防空識別圏に頻繁に近づいてきますね)から遠すぎる」と反論されたせいか、この冊子では『沖縄は台湾海峡や北朝鮮などの潜在的紛争地から近い(近すぎない)位置にある』とある。(近すぎない)って、取ってつけたような・・・

 政治が「黒」といえば、白を黒にしないといけない行政の職員は本当に大変。ありきたりの資料や図表を使って「はい、おっしゃるとおりに作りました」という感じだ。こんなもので道理が通るはずもないと分かっているから、こんなサインも入れたくなるのかもしれない→
 冊子の中の「自衛隊の米軍の関係(イメージ)」
 
 アメリカ軍が矛で、自衛隊が盾・・・あわせると「矛盾」だし

 これは・・・意図的でしょう。こうゆう冊子を作るときには何度もチェックするはずだから薄黄色の別枠でイラストまでつけたもので「見落としました」はあるまい。まさか「矛盾」を知らないわけでもないし。しかも(イメージ)って何?

 外国の軍隊の基地移転には熱心なのに、自衛隊は陸海空一緒な上に民間と共用の那覇空港には関心がいかない歴代の政治に対する怒り?

 まあ矛が二股なのはロンギヌス?、盾はアメリカ軍の階級腕章を逆にしたもの?というのは深読みしすぎだと思うけど・・・
 
 アメリカ軍だって名称上も政治上も建前上も「ディフェンス」で通しているのに何でわざわざ(攻撃力)として矛に例えたんだろう?

 





 在沖米軍の発行する冊子は、あらゆる記述に細かな計算と配慮が見えるのに・・・

 比較参考に最新号の「在沖」の「海兵隊」が発行している冊子「ビックサークル=おおきなわ」(→おきなわ、というご愛嬌)を掲載しておく

 まず洗練された紙面の構成が違う。そして記事では米軍基地内で多くの野菜が販売されいることをアピールしている。もちろん巻頭特集は「トモダチ作戦」で、そのほか米軍によるボランティア活動や、日本人とのフレンドシップストーリーであり、押し付けがましさは皆無で、注意深く「都合の良い事実」を抜き出している(逆に日本のおもいやり予算で整備される施設の資材も米国製が指定されいること、大型工事は本土企業が独占していることなどはもちろん掲載しない)。
 
 上手い。というか、これでこそ広報。これを呼んで沖縄経済の事を話して恥をかくチシキジンもいるが、それは米軍の責任ではない。

 これを読んだ沖縄を良く知らない人なら、沖縄に来るとアメリカ軍人が野菜を買って家に変える姿を目にすることができると思うかもしれない・・・(まったく逆にウチナーンチュと米軍の関係がギクシャクしていると思っている人も多い。「坊主にくけりゃ袈裟まで憎い」という言葉も感覚も沖縄にはないからね。米軍内でも沖縄は今でも赴任地として人気が高い。私も米国本土の基地を視察したときに何度か握手をされたほど)。

 
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