自壊する帝国

比嘉俊次

2010年02月27日 17:00

 佐藤優のドキュメント
 本の世界では「ノンフィクション」の分類が普通だが
 一人称を基本として、背景説明の挿入など
 欧米のドキュメンタリービデオの構成に近い
 なんとなく視覚的な感じがする「記録」
 
 社会主義、マルクス主義、ロシア正教、人称など
 「ロシアもの」を読むものを挫折させる要素を
 知らなくても読めるようになっている
 
 逆に言うと、一見客観的でも著者の世界観・視点に
 読者は無意識に引き込まれる(引きずり込まれるととも)

 だからなのか、理路整然としながらも読み終え
 少し離れると腑に落ちない部分もある
 
 例えば「情報はタダで手に入るものか?」という疑問
 情報は『等価交換』が基本だとおもうが・・・
 細かなテクニックや、取り入るまでの道筋はあるものの
 その奥義は明らかにされてないと感じる

 著者は自分で「自分にはずるいところがある」といっているが
 これは卑下でも謙遜でも本当だと思う
 まず何がずるいって、自分で宣言してしまい、先に避難口を作っている

だけど、同時に著者はすごく真面目で、「思想」とか「政治」よりも、
ドフトエフスキーのような「魂」について描きたいという意図が見える
章立て、というか激動の縦糸(ストーリー)と静かな横糸(人物)の織り込み具合もしかり

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