2012年02月10日

日本語教室

『日本語教室』
 井上ひさし 
 新潮新書

2001年に上智大学で4回にわたって行われた講演を書籍化したもの
ゆえに・・・前出の書「漢字と日本人」ほどの濃さも深さもない。その分?読みやすくもあるが・・・

基本的に文中におけるカタカナや欧米文字の乱用による「日本語の乱れ」を憂い、一方で明治時代の初期の漢字による幾多の造語を「漢字倒れ」と表現し、注意を与えている

つまり外来語を排斥するものではないが「和語」を大切にしよう、という呼びかけ。
これは新しいものでも、変わったものでもないけれど、漢字だけでなくカタカナや欧米の文字までが深く日本語に入り込んできている現状をわかりやすく解説

しかし、この本で何よりの発見はアナウンスにおける「間」がなぜ大切なのかを気づかされたこと

日本語は音節が少ない。その上、すべて開音節(すべて母音で終わる)。アクセントも高低2通りしかなく単純・・・となると、アングロサクソンの言葉にあるような「うねり」を作ることは難しく、音の変化や流れは五・七・五などのリズム(間)で作るしかない
あとは韻を踏んで「うねり」に似た効果をいくらか出せるかだ
ならば発声の要点も「間」をコントロールするための「入り」の声の安定度や「止め」の響きのしつけが必要になってくる

そのほか、原稿を読む際に「理解」が必要な「意味の切れ目」についても言及されている

「黒い目のきれいな女の子」

どこで「間」を取るかで意味が変わってくる
他にも
「新聞で汚れた国の大掃除」(新聞週間の標語だそうだ)
「美しき水車小屋の娘」
「むずかしい子どもの教育」
などを例示

(ここではきものを脱いでください、というのが小学生のころ国語の時間に出たな)

「漢字と日本人」では
「かてい(家庭・仮定)の問題には答えられない」という文字の問題からスタートしたが、日本語はそもそも音(文法)においても曖昧さというか不正確さがあるということ

読みがいがある



  
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2012年01月25日

漢字と日本人

『漢字と日本人』
高橋俊夫 文春新書198

これは勉強になった。仕事をしていて感じていた日本語の難しさ≒不条理さが納得できた

筆者の結論を先にすると、言語とは一般に音声があって文字はそれを表すものだが、日本語は逆で、文字が主で音声は従、というおそらく世界でただ一つの奇妙な言語(筆者は畸(奇)形と形容している)ということ


なぜか?それは古くは中国から、近現代は西洋から多くの言葉(=知識や概念)を輸入したから。それも直輸入ではなく、当時の知識人が加工して輸入した
古くは「漢字」とともに文字と知識が輸入されたが、そこでまず中国読みの音をそのまま使う「音読み」が生まれる
次に、漢字の「意味」だけを使い、発音は日本語の該当する言葉をそのままあてる「訓読み」が出てくる
さらに厄介なことには、日本に入ってきた時期によって、音読みでも「漢音」と「呉音(対馬音とも)」と複数の読み方が生じた
⇒今日、14日は祝日だが日曜日(日本人なら小学生でも読めるが・・・)

江戸時代までは「日本語の文字=漢字」で、かなは補助的にしか使われていなかったが、幕末から「今度は西洋に倣おう」という大方針転換の下、漢字を排除し、かなを文字の中心に据える国語改革が進めれらていく
(一足飛びにアルファベット表記というのも真剣に検討されたようだ)

だが面白いのは幕末以降、西洋から大量に入ってきた新しい言葉に片っ端から「漢字」をあてていく
これで日本語は新しい問題を含み、さらに複雑さを増していく  続きを読む
Posted by 比嘉俊次 at 23:45Comments(1)言葉

2012年01月21日

死ぬときに後悔すること25

死ぬときに後悔すること25
 大津秀一  致知出版

『人生が変わる1分間の深イイ話』でも紹介されていた本
タイトルは今風の「まとめ系」というか「手軽系」を連想させるものだが、読むと至極全うな内容
版を重ねているのもわかる(平成22年11月26刷、25万部突破とある)

致知出版、そして作家かと思うほど語彙が豊富で放送人のように言い回しが慎重。著者の履歴から見ると34歳でこの本を書いたようだ・・・

このたび司会をすることになったNPO「マインドケア沖縄」主催のイベントに著者が出演することとなり、正直心配した。「妙に達観した、僧侶みたいな人だったらどうしよう。いや、曲がったことは一つも許さない神経質な人だったらもっと困るな・・・」と思っていた

が、それは杞憂だった

控え室で打ち合わせしている時は専門職らしい熱意で話すが、ステージではちゃんと言葉を選んで必要ならば比喩や具体例をあげて平易にステージの理解具合を気にかけながら話している。やるなあ・・・

大津先生は真面目なことは真面目。質問をまず「流す」ということがない。だが冗談も通じれば、場つなぎで少し的まずれな事をいってしまえば「今のどうゆうこと?」と困惑が顔に出る。著書の中でそういっているのは謙遜ではなく事実のようだ

ただやっぱり腰が据わっているのはわかる。なんでだろう・・・単に「1000人の死を見届けた」というだけではないだろう。著書にあるように何事もそう簡単に正解がないのを肌身にしみているのか
かといってヘンに老成して訳知りがののことを言うわけでもない

だから対談もおかげでスムーズ
直言するが人間の不完全さを許容する。でも考えさせる。

視野が広い、俯瞰できる能力が高い人なんだろうなと思った
   
Posted by 比嘉俊次 at 23:30Comments(1)社会

2011年12月17日

人間の絆

 『人間の絆』
 of Human Bondage
  W.サマセット.モーム 訳:中野好夫
 新潮文庫 819円×2(上下巻)

大学の頃買って、30Pも読まなかったけど今読むと中々読ませてくれる。逆にあの時面白かったJ.アーチャーに今は興味なし。歳をとったのか・・・

主人公、フィリップ・ケアリにモーム自身の半生を投射した長編小説。やはり印象深いのは実体験に基づいた病院でのシーンの数々、特に「みな一様に罰せられていた」(下巻の217P)や、有名な「東方の王様と歴史書」のエピソード「人は生まれ、苦しみ、そして死ぬ」・・・なんかロクでもない小説みたいだけど、そうでもない
全編を通して皮肉で内気で自虐的なフィリップを中心に描かれているが、楽しいシーン、情熱的な語り、人の温かさもある。特にラストの太平さは肩透かしとは違う落ち着きががあって悪くはない(まあ面白くもないけど)

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Posted by 比嘉俊次 at 20:05Comments(2)小説

2011年11月08日

食料を読む

 『食料を読む』日経文庫
 鈴木宣弘・木下順子

 
日経文庫はいい本が少なからずあるが、扱い書店が少ない。アマゾンで購入。860円プラス送料250円。情報格差・・・

TPPの特に食料分野につて一級の「論客」といえる東京大学大学院の鈴木教授とコーネル大客員研究員の木下さんの共著

食料問題のマクロ経済学的な視点と、食料政策(単に農家保護だけでなく、輸出まで含めた食料戦略)の奥深さを知る
特に前半のマクロ経済学的な分析はわかりやすい。言葉の明快さでごまかしているんじゃなくて、言っていることが解ができる

しかしTPP参加の是非が問われる今、大切なのはそこではない

アメリカの手厚い農家保護
・輸出価格に、返済免除or融資不足払いで支援、そして固定払いで上乗せ、それでも足りなければとどめの不足払いでゲタを履かせ手取り確保
・輸出補助金は全廃したが、国内向け出荷には輸出分の補助金も載せられた額に相当する補助金が支払われているが、これはOK
・自由貿易を掲げながら、より競争力があるオーストラリア農業に対するガード
の理論立てと、そこにある戦略。すごいな・・・やっぱり心配なのは単価や品質うんぬんではなく、アメリカのこの理論をタテにした交渉力か?


巷で繰り返される「強い農業」の空虚さ・・・鋭い指摘。サクランボなどの嗜好品と、コモデティといえる穀物を同列に並べて論じる乱暴さ(というか経済学的なおかしさ)はもちろんない

スイスも「消費者の育成」とうまくやっているが、お隣の韓国もCO2フドーマイレージを公共交通機関のチケットと交換するといううまい策を考えている。国内の農作物の保護になるし、公共交通機関の経営支援にもなる

クリチバの公共政策でも見られることだが、目的を考えれば「なるほど」と頭のいい人なら考えつきそうなことではあるが、日本ではついに・・・この未曾有の震災でも唸るような政策は出てきていない
「縦割り行政」では単に非効率というだけでなく、外交交渉での理論立てで太刀打ちできないことが示されている

さてTPPどうなることか・・・明後日にも野田総理は参加の是非を態度表明するとみられている
  
Posted by 比嘉俊次 at 21:27Comments(1)社会

2011年11月08日

決断できない日本

 『決断できない日本』
The Japan That Can't Decide
 
 
 
 
 ケビン・メア  文春新書

 
やっぱりメアさんを嫌いにはなれない
http://higatoshitsugu.ti-da.net/d2011-05.html

主張は強いが、かなり注意深い章立てや構成(相手の弱点を徹底的に付き、自分の論が立つところのみで勝負。自分に不利な点があれば、事前に断り深追いを防ぐ・・・アメリカの法廷劇そのもの)
そしてポイントでは琴線に訴える単語の選択・・・なるほど司馬遼太郎を読み、黒澤映画を観ていたのか・・・これはメアさんの趣味なのか、それとも日本人の心情を理解しようと解読していたものなのか・・・などと思うと、この本はメアさんの主張とは別に、後年歴史資料として貴重だと思う。舞台裏というかアメリカ外交当局の様子も綴られている

それだけに、誤った・・・というか意図的と思われる沖縄を誤認させる記述は改めてほしいが・・・「シニアオフィサー」として思い通りにいかなかったことをよっぽど腹に据えかねているよう
(伊波・前宜野湾市長が「事実と異なる」と名誉棄損で刑事告訴したが、ちゃんと冒頭で「個人的な経験に基づく」と予防線もあるがどうなるか・・・)

だが、今冷静に振り返れば、メアさんの先代のトーマスさんまで、歴代の総領事が多数派を占める沖縄の保守層と慎重に積み上げてきたものを結局はメアさんが崩し、混沌とした政治状況を作り出してしまったのは、単に結果論とは言えまい

もう一つの収穫は、日本の官僚もこんなタフなアメリカ人と丁々発止やっていた人がいるということか
アメリカの外交官からするとイヤだろうが、日本の役人が言われるままに法を曲げていては心もとない

しかし、日本語詳しいな・・・「横紙破り」「棒をのんだような」・・・ときて「先制的自衛権」という言葉も披露している
そして「普通の国」という言葉については巧妙に解釈を避けている・・・さすが

これだけの力があるなら日本の国籍を取得して日本のために働いて欲しいと思わなくもないが・・・ありえない話だろうな。どんなことがあろうとも、やはりメアさんが尽くす国はアメリカ以外にないという意思が本書から滲んでいる  
Posted by 比嘉俊次 at 20:55Comments(0)社会

2011年10月29日

なぜ若者は保守化するのか

                                 
 『なぜ若者は保守化するのか』
 反転する現実と願望
 山田昌弘 著

 「格差社会」や「未婚」「少子化」など若者を取り巻く閉塞感について、おそらく雑誌連載されたものをベースに単行本化したものと思われる
全体としての統一感はないが、著者の主張は伝わる。納得もできる

この本で最も気になるのは一線で活躍する社会学者が「マスコミが自説を取り上げてくれない」と何度ももらしていることだ
著者の主張する「(経済的)格差」は2006年にNHKが「ワーキングプア」というドキュメントで世論を喚起して後、特に若者の貧困が深刻で、結婚どころではなく、そのため子どもも作れず、日本は人口減少と高齢化という大きな構造的な問題に陥っているという主張は何度と無くTVだけでなく新聞でも指摘されてきたはずだ

それなのに著者は「マスコミは・・・」と言っている・・・とても興味深いことだ

著者に限らず「マスコミは・・・」と口にする人が増えている。以前は政治家や芸能人のセリフだったのが、マスコミを通じて世間に伝播したというのもあるだろうが、この言葉の背景にはもっと社会的な変化があると思う

私の主観では、興味深いことは「これからはネットの時代。従来のマスコミは地位がどんどん低下していく」と言う人から「マスコミは・・・」というセリフを聞くことが多いことだ

インターネットが普及した2000年頃には「ネットに接続すれば、だれでも世界に向けて情報を発信できる」と紹介された


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Posted by 比嘉俊次 at 22:32Comments(1)社会

2011年10月16日

人間都市クリチバ

『人間都市クリチバ』服部桂三
学芸出版社

ブラジル南部の都市、クリチバの都市計画についての本

クリチバはバスシステムが優秀とネットで見かけたので、そのあたりを期待して買ったものの・・・バスシステムのテクニカル的(バス停の間隔や回数券、乗り継ぎ時のターミナルの配置、運行頻度、経営、)な記述は薄い
図説も少なく、分かりやすさや面白さとは縁遠い大学のテキストのよう

ただ、タイトルにあるとおり著者は実践的な都市計画のあり方を著すというのが目的でその目的は達せられている

クリチバは経済的に特に豊かでもなく、洪水やスラム街などの課題を抱える街であるが、アイディアと実践によって世界から注目される都市となるよう計画され、かなりの成果を収めている
単に利便性や採算を考慮するだけでなく、低所得者への配慮や次世代への教育など、人間中心に街づくりを行っているので「人間都市」というタイトルをつけている

例えば最も有名なバスシステム。人口200万人を超える都市で地下鉄でも不釣合いではないが、お金がないからバスで。普通のバスでは鉄道と比べて輸送力とスピードで劣るので連結バスと専用レーン、前払い制のプラットホームを導入。路線周辺は建築基準を緩和し都市機能を集積する一方で、周辺には緑地を配置(開発権の交換などで財政出動を抑える)。さらに車を持てない低所得者とその職場を考えて新規路線を設定・・・と、交通政策が財政・都市開発・環境保全・福祉と一体となり、誰もが住みやすい街を目指している

さらに児童図書館を各地に整備、公園には羊を放って管理費の削減と・・・正直、驚くような仕組みは特にない。が、著者が何度も協調している通り、クリチバはそれを強固に実践し、一方で時代の変化に合わせて柔軟に運用している。そして人口60万から40年ほどで4倍以上に街を「つくった」。これはすごい

日本はお金も技術もあった(あえて過去形)のに、きれいな街は保全地区ぐらい
なぜだろう?道路(主要道路は国と県)と都市開発・福祉(自治体)の主体が別だから?そもそも政治(つまり有権者)に「街づくり」という意識がないのも致命的だろう

沖縄もインフラは整っている。あとは政治に意思さえあれば渋滞解消なんて簡単なのに・・・

履歴
アマゾンの古本で「程度良」で高い方を買ったのに、赤ペンは入っているし(しかも「なぜここに?」という所に)、〇〇さんへという著者へのサイン入り・・・買うのはかまわないけど、これ売っていいのか?  
Posted by 比嘉俊次 at 14:11Comments(0)社会

2011年10月10日

社会学がわかる辞典


 『社会学がわかる事典』森下伸也

新品同様を新品と同じ値段の1500円で古本屋で購入。この値付けは大学の社会学原論のテキストに使われていると推測

日本実業出版社の「活用自在」シリーズはどちらかというと雑学本的なイメージが強いが、本書はシリーズの見開き2ページ読みきり形式を踏襲しながらも「体系」を十分に意識したつくりになっている
もちろん索引もちゃんとついて事典としての機能もある

何より感心したのは社会学史が一番最後にある構成。これは普通は冒頭にもってきてしまうが、十分に社会学に対する興味をひきつけたところで更なる深みに誘うような巧妙な配置・・・このところ編集が残念という本が多かったが、これはアタリ
この構成はユーモア学を専門とする著者のアイディアか、編集者の力量か・・・

ストーリーは凝ろうとすると「裏の裏をかく」的な無理やり感や、360度まわってしまって何の捻りもないストーリーになってしまいがちだが、これはいい方法

内容だけでなく構成も含めて仕事に応用できそう

やっぱり社会学は役に立つ  
Posted by 比嘉俊次 at 22:28Comments(0)社会

2011年09月22日

図説世界の「最悪」クルマ大全

図説世界の「最悪」クルマ大全
グレイグ・チータム著
川上完監訳 
原書房2400円

デザインや機能面で「最悪」といわれる古今東西の150台を紹介

おそらくイギリス人とおもわれる著者の、イギリス人らしい(?)辛らつ、かつジョークを交えた車評が中心で「図説」とタイトルにあるにも関わらず、基本的に写真は各車2カット。基本的にその辛らつな車評を読んで楽しむ本

エンジン形式と燃費はあるのに全長×全幅×全高がなく、何のための川上さんの監訳なのか・・・テクニカルな資料としての価値は乏しい

が、アルファ・スッドなど有名な問題車だけでなく、ブガッティ・ロワイアルやローバーSD1など有名だが写真をあまり見ない車が多く乗っているのはやはり車好きには楽しい

また機能的には失敗作かもしれないがデザイン的に見るべき点があるオースチン・プリンセス18-22、シトロエン・GSビロトールなど、車の辞典にも載らないような実用車も数多く掲載されているのがいい

特に  続きを読む
Posted by 比嘉俊次 at 21:51Comments(1)資料

2011年09月21日

沖縄バカ一代

『カベルナリア吉田の沖縄バカ一代』

久米島のホテル売店で発見。宝島社の「VOW」シリーズの沖縄版。さらにルポなども織り交ぜて沖縄のB級風俗を写真とコラムで収める

悪いが本当に「バカ」な一冊で、暇なときに適当にページをめくって楽しめる。ルポもコラム程度

だが、情報量がハンパじゃない。ウチナーンチュ以外が書いた沖縄本はどんな本でも「情報が足りてない」とまず思ってしまうが、石川の「民衆食堂 山城」、勝連の「愛二人」嘉手納の「赤黒」までカバーしている・・・
個人的に一番キタのは「トテタテ」と「チチワ」。ワープロでうち間違いならわかるが、手書きで・・・

キャプションもよくできているのに・・・この表紙はもったいない。これじゃB級というより・・・この表紙で買うのは恥ずかしかったが、取材量に敬意を表して1300円

確かに、沖縄の「ノンキな風景」はもっと気づいてもらえば観光資源になるかも・・・?  
Posted by 比嘉俊次 at 14:00Comments(0)資料

2011年09月14日

世界の国名地名うんちく大全

世界の国名地名うんちく大全
八幡和郎 著
平凡社新書562 880円

新書ながらタイトルに偽りなし。全世界の国名地名についての「うんちく」が詰め込まれた1冊

国連未承認の国を含めて、おそらく全て網羅してあると思われ、それを300ページ以内に詰め込んでいるので図も足りず、筆も急いでいて読みにくい
が、ものすごく濃厚な1冊

むしろ地名の由来はさわり程度でそこから見える各国の歴史が新鮮

例えばトルコ。イスラム教は民族より宗教意識が優先でオスマントルコも「トルコ人意識」は薄かったというが、ヨーロッパでの民族意識の高揚を受けて、トルコ人意識が芽生え、トルコ語の強制などに結びつき、結果帝国としての力が衰退していったという考察
そもそも「トルコ系」などというのは現在の国(この概念も欧州的な意味では意外と新しい)や民族(←現在でも定義はあいまいだが)という大きさでは認識できないということに気づかされる

また「中南米」とひとくくりで認識している地域もメスティーソ、アフリカンが多数派を警醒するだけでなく、ほとんど欧州系で占められるエル・サルバドル
労働力としてつれてこられたインド系が多数を占めつつある南洋のフィジーなど、地域による事情の違いなど

アメリカ人はアメリカしか見えていない、欧州人はなぜこんなに違う日本と中国の区別がつかないのか、と普段思っていても、自分も結局は世界を知らないと思い知らされる

興味深いのは
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Posted by 比嘉俊次 at 14:56Comments(0)社会

2011年08月29日

中華人民共和国史

『中華人民共和国史』
天児 慧  岩波新書646

日中戦争の「国共合作」から49年の人民共和国成立を経て、1990年代までのおよそ70年を中心としたもの

しかし、あとがきまで含めても207ページの新書で歴史、ましてや中国史など描き切れるわけもなく、かなりの駆け足で、読むうちに湧いてくる疑問に応えてくれるわけでもなく、調べが必要になる用語も多い

例えば、事実上一党支配となっている中国の権力構造。軍の掌握が必要なのは中国史からしてなんとなくわかるが、では「総書記」と「主席」の違いや、国務院総理(行政の長)や「政治局員」というものがどの程度のポジションなのかが分からない

おそらく「人治ともいえる中国ではポストは目安でしかない」という著者の判断で、そこに行数を割くよりも、構図が見えるようにしたいという意図からだと思う。実際、鄧小平は日本のニュースでも「中国の最高実力者」という分かるようでよく分からない形で紹介されていたが、やっぱり説明が不十分では構図のディテールが見えてこない
あと、度々開かれる「第14期6中全会」や「中共全国大会」などの「会」も位置づけがよく分からない

つまり、入門書にはなりえない

でも不親切な本と言うわけでもなく冒頭紹介されている中国史を動かしている5つのファクター(ナショナリズム・近代化・伝統・国際インパクト・革命)論は分かりやすい(ただ本文中ではそれをあまり引用していないが・・・)
毛沢東の「戦争常態論」「根拠地論」など時折深める各論は非常に分かりやすく、この部分は入門編として参考になった
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Posted by 比嘉俊次 at 14:43Comments(0)社会

2011年08月17日

セックスメディアの30年史

『セックスメディア30年史』
萩上チキ著 ちくま新書 820円

性産業の情報伝達面(メディア)にターゲットを絞った30年史

本やネットといったBtoCの「媒体」に限らず、「出会い系」のようなCtoCといえるような「媒介」メディアにも目を向けてポケベルやケータイ、ネットという変遷もとらえている

たまたま立ち読みした時ページが生き残りをかけるエロ本専門店と「ラブドール」製造会社へのインタビューだったのでマーケティングに重点を置いた本かと思ったがそうでもない

もっとも期待した「性風俗」という欲望と規制がイタチごっこを続けるドロドロとした「ホンネ」の世界を期待したのだが・・・全体にサラッとしている

テーマがテーマだけに清潔感があるように心掛けたのか・・・本書でもメーカーの操業者が語っている通り、そもそも「性」自体は恥ずかしいものでもないのだが

マーケティングもアングラ的で「何でもアリの世界の作法」を垣間見せてくれるかと思いきや、一般のマーケティングと変わらぬ正攻法(実直・高品質)が中心

限られた紙幅の中で特に「媒介」手段の変遷については事細かに追っていると感じたが・・・ポケベルやプリクラなどはまさに自分の世代に生まれたものなので「懐かしい」という感想はあるが、それ以上の「へーっ」というような考察はない
著者は81年生まれ。一回り若い著者にとっては発見・発掘だったのかもしれないが・・・

最終章に  続きを読む
Posted by 比嘉俊次 at 15:58Comments(0)社会

2011年07月31日

数学は最善世界の夢を見るか?

 『数学は最善世界の夢を見るか?』
 
 イーヴァル・エクランド  みすず書房

 
ヨーロッパの学者が求めつづけた宇宙(この世)を統一する理論(=神の意思)を求める歴史の物語。読み返しと検索の連続で、一通り理解するのに1ヶ月かかった。
ガリレオ、フェルマー、デカルト、ニュートン、ポアンカレなど大物スターの名前は当然出てくるが、前半の主役は「モーペルテュイ」というフランス人。初めて知った名前だが、その思想だけでなく社交界での振る舞いなど、なるほど話の起点に相応しい。

先日、フランク・ミュラーが日本のテレビで紹介されていたのを思い出した。彼が時計学校を主席で卒業したことや、時計の技術的特長について紹介していたが、印象に残るのは彼のオシャレさと時間に対する深い洞察。時間を正確に刻むという時計の役割はすでに究極のレベルに達したが、時計「文化」の中心はまだしばらくヨーロッパだなと感じた。
そして科学・数学の中心はこの先もヨーロッパであり続けるかもしれない(ノイマンはハンガリー生まれ、ハゼンベルグはドイツ出身)。
フランスなんて原子力技術以外では特に「進んでいる」というイメージは正直なかったけど、数学・科学の歴史の深さ(深み、といったほうが適切か)の違いにため息が出る。根っこが違う。ディドロも数学の本に顔を出すなんて・・・。

モーペルテュイ、そして「神はサイコロを振らない」といったアインシュタインの夢、希望が不確定性原理によって崩れ、科学が「隠された神の意思を探す」という西洋科学の哲学的柱が失われた所を確認して後半がスタートするが、そこからは趣旨が変わり(というかようやく本題)社会科学の本になっている。
ここでも様々な政体を「考案」し「獲得」「実践」してきたヨーロッパの深みが・・・ヨーロッパ人というのはギリシャの哲学・科学という強固な基礎の上に、ローマ帝国とキリスト教が乗り、そこで生じる矛盾を無理やりにでも「理論的な決着」をつけてきただけのことはある。
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Posted by 比嘉俊次 at 19:30Comments(0)科学

2011年07月02日

甦る海上の道・日本と琉球

  『甦る海上の道・日本と琉球』
 谷川健一 文春新書560

 基本的には「マレビト」の折口信夫の説を踏襲した論考。

 南朝について落ち武者となった八代・宇土(熊本)の名和氏が佐敷に拠って第一尚氏を興したというもの。
 世界史的にはノルマン人が各地で興した征服王朝や欧州人の米大陸制圧など海事に優れた集団が寄留し支配者となる例は多い。ましてや鉄がまったく採れない沖縄では鉄器を持った武力集団が上陸すれば防ぐ術は無かっただろう。
 また王権を「禅譲」されたことになっているはずの第二尚氏の第一尚氏に対する厳しさや、第一尚氏の八幡信仰(名和氏は源氏)なども「第一尚氏=九州倭寇説」を支持しているともいえる。少なくとも為朝伝説よりは根拠のある話。いや、為朝伝説は落ち武者伝説が混同したか、あるいは意図的に差し替えられものの可能性も・・・

 また鉄屑の残滓(⇒鍛冶屋)などを元に宮古人のルーツについての考察も興味深い。宮古に「大津波で村が滅びた時、大和の男が宮土(保良)漂着し、避難して難を逃れた大ツカサと出会って結婚し子孫が栄えた」という伝説があるとは知らなかった。
宮古の人は沖縄島のウチナーンチュと比べ、色白で目鼻立ちもスッキリした人が多いというのも食の違いよりも血の違いなのかもしれない。沖縄島と宮古は300km。実は見える距離の島伝いに繋がっている鹿児島よりも遥かに「遠く」、同緯度ながら生物学的な違いも多い。何より石垣には大津波の伝承もあり、当然に大津波の過去はあったはず。あの平坦な島が大津波に襲われると島民の大方が流され、血が入れ替わることは十分ありえる。

 過去において歴史は時間がたてばたつほど検証が困難だったはずだがDNA検査などで有史以前。5千年や1万年前のこともわかってくるだろう。
 人類史を見ると封建制度で土地に縛られる以前の人間は驚くほど活発に移動している。また貿易や征服による富の移動も人を航海・長駆へと駆り立てる。北のアイヌの歴史も面白そうだ。デンマーク人より先にアメリカに行った人もいるのではないか。人類学や考古学で当たり前に語られる日本人のルーツが歴史としてきちんと紹介されるようになると、また北海道から沖縄までの島々に住む人たちのすばらしさが再確認されると思う  
Posted by 比嘉俊次 at 19:56Comments(1)社会

2011年06月14日

冷血(IN COLD BLOOD)

 
 トルーマン・カポーティ『冷血』
 (2006年佐々田雅子・訳による新潮文庫)
 
 カンザスで信仰心厚い篤農家の一家4人を惨殺したペリー・スミスとリチャード・ヒコック(ディック)の犯行から処刑までを綿密な取材に基づいて小説化したもの・・・ということで特に興味はなかった。「犯罪もの小説」だと思っていたから。あまりそんな小説には興味はない

 しかし、読んでみると「犯罪もの」では言い尽くせない奥行と広がりがある。殺人がストーリーの縦糸になっているが、それは本当に話を進めるためにあるような感じ。
 例えば捜査官のデューイは優秀な人物として紹介されているが、彼は全く見当違いのスジを追っていて「犯罪もの」のハイライトである犯人の目星がつくのはデューイのち密な調査や冴えた推理ではなく、ディックの元同房者によるチクリであることが特段の演出なく書き出されている。裁判も手に汗握る法廷劇はなく、死刑が宣告され、刑務所に入り死刑執行までの5年間も「罪への後悔」や「死への恐怖」など小説家としていくらでも筆が進みそうなものだが、逮捕から刑の執行までは全体の4分の1ページも割いていない

 描かれているのは犯罪ではない。アメリカの聖書の世界に生きる人々の善意と赦し(それは罪を犯したペリーとディックにも分け隔てなく与えられる)、罪を犯した2人の虚栄心や猜疑心、そして宗教と法、持てるものと持たざる者・・・つまり人間と人間社会を描いている。そしてそれを取り巻く、どうしょうもない不条理も

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Posted by 比嘉俊次 at 19:27Comments(1)小説

2011年06月09日

ベストカー

 仕事柄、雑誌は時々読む。時々

 だが一つだけ、欠かさず買って読んでいるのが、この『ベストカー』(講談社BC)

 車は好きで車の本も年に何冊か買うが、これは雑誌として非常に面白い

 まず、車のレビューにはお世辞ばかりで信用できないものが多いがベストカーは辛口の徳大寺有恒から、飾らない素人目線のテリー伊藤の連載がある。さらに写真中心の車雑誌では異例の記事、しかも企画記事が充実している。例えば(火力発電しかない)沖縄で電気自動車はCO2削減になるか、ということを計算してみたり、なぜか「姉様女房率」などの見かけないデータを持ち出して無理やり車に結びつけたりと、あの手この手で企画を練っている。なんというか、とてもジャーナリスティックを感じる雑誌。車雑誌で発行部数NO1というが、こうゆう本がちゃんと売れているのは嬉しい

 車は日本の基幹産業。しかし国は車に冷たい。買って税金がかかり、乗ると税金がかかり、持っているだけで税金を取られ、古くなっても使い続けていると重加算税まがいの税金が課せられるのは車以外にない。数百万の高級腕時計を持つより、普通のファミリーカーを持つ方がはるかに税負担が大きいという現実。こうゆう事にも常にご意見し続けるライター陣

 もちろん不満がないわけじゃない。まず2カ月も読めばわかるが、社長(前編集長)の特定のメーカーに対する思い入れが強すぎる。それ自体は別に悪くないが、全体にメーカに媚びない姿勢に好感を持っている読者が多いだろうだけにもったいない。それから新車情報でも写真が少ない(ただしカットとレイアウトは無意味に飾らず車の魅力が伝わってくる)。それと、表紙が・・・カウンターで隣の人に見られるとなんか恥ずかしい・・・一般の週刊誌のようなエロページもないので、恥ずかしい事はないんですがね。だからいつも取り置きです

 今、家計が苦く携帯電話などにお金が向かっている中で車好きは激減しており、車雑誌も廃刊が相次いでいる。ベストカーも厳しいんだろう、タイアップ記事が増えているのは同じ業界のモノだから分かってしまうが、頑張って欲しい

 ちなみにテリー伊藤は「車変態」を名乗っており、毎晩就寝前に今欲しい車ベスト10を思い浮かぶそうだが、私は「宝くじで三百万円当たったら」という想定でネットで中古車情報を見ては色とオプションを勝手に決めている・・・後は取材先で気になる車を見かけると、誰の車かを確認してしまう  
Posted by 比嘉俊次 at 19:23Comments(0)雑誌

2011年06月03日

朝日新聞記者が書いたアメリカ人「アホ・マヌケ」論

  『朝日新聞記者が書いたアメリカ人「アホ・マヌケ」論』講談社+α新書

 アメリカ論、アメリカ人論の本はいくらでもあるが、あまりピンとこない内容が多い。NYやハリウッドのアメリカ、WASPエリートのアメリカ、スポーツのアメリカ、マイノリティのアメリカなどいろいろあるが、どれも一面でしかない

 が、この本は私が感じた「アメリカ」に一番近い。アメリカは広いし、アメリカ人は国籍以外に共通項はないぐらいだ

 実は都会出身のアメリカ人は車がうまいとか、全般に運転マナー(規則ではない。ゆずる、せかさないというマナー)がいいとか、「食事を消費する」という所などは沖縄にいてもわかることだ

 その他、トイレ作法やレジの作法など、細かな所にアメリカを見つけだしているのはさすが記者。考察も小難しくないが、確信をついていると思えるものが多いし、文書も緩急があって読んでいて飽きない
 
 今でも時々「基本的い価値観を共有する日米」なんていい方をする人がいるが、バイブルベルト・ディープサウスを旅した事がある人なら、簡単にそんなこと言えないだろう。沖縄でミドルクラス以上の毎週教会に出かけるアメリカ人ファミリーが越してきても同じ思いをすることになる。宗教が違うというのは価値観に結構な違いが出ると思う

 そして、アメリカ人はとにかく親切な人が多く(明る人の割合は日本人と変わらないと思う)、アメリカ人に当然好感を抱くが、なぜかこの親切な人たちが度々戦争を仕掛けて矛盾を感じないという所だ。この辺りはもうちょっと考察が必要だろう。単に「軍産複合体が~」という話ではないだろう

 もちろん著者はアメリカ人を「アホ・マヌケ」と思っているわけではない  
Posted by 比嘉俊次 at 09:30Comments(0)社会

2011年05月26日

悪魔の用語辞典

 副島隆彦編著
 『悪魔の用語辞典』

 副島隆彦「編著」となっている事に注意
 
 ビアスの「悪魔の辞典」にあるような風刺も毒もない。読者を「啓蒙」してやろうという鼻息の荒さだけが伝わってくる

 なぜビアスのようなキレがないのか・・・おそらく風刺には人や社会を切るだけではなく、時に自分自身をこき下ろす「自虐」というスパイスが必要だからだと思うが、この本にはそれがない、からだと思う。ひたすら自分たちは人間社会を上から見下ろすという構図。悪魔は人を上からも見るだろうが、背後からのぞき見たり、時には内面にも入り込んでこないと

  それに「悪魔の・・・」であるはずが、オックスフォード辞典という人間の一言語による辞書を聖典のように仰ぎ見ているんだから・・・本書からは「ケケケ」という冷笑は聞こえてこないし、欺瞞に対する怒りよりも「どうせ」的な無力感が伝わってくる章がほとんど
 
 こうした基本的な構図の問題だけではなく、文書も冗長で「辞典」に必要な端的さに欠けるし(もちろんこれは辞書じゃないが体裁上)、なにより視点にあまり新しさというか目からうろこ感がない

 閉店間際に、著者の名前と表紙だけでカゴに放り込んでしまった。1680円・・・  
Posted by 比嘉俊次 at 14:24Comments(0)社会